京都の野外彫刻              ~フィールドワークⅡ~

フィールドワーク③

「空にかける階段’88-Ⅱ」 富樫 実 作

  富樫実の「空にかける階段」シリーズ作品の中で代表的な作品です。

この作品は1988年に京都市美術館に初めて設置された野外彫刻です。また,完成時は日本最大の高さの彫刻であであった。

 しかし,現在の作品は市美術館の再整備工事にともない撤去され再設置されたものです。当初は作品を分割し撤去する方針だったようだが,多くの惜しむ意見があり,ぼほ同じ場所に置かれることとなった。ただ残念なことに,作品の根本から切断され当初の高さから短いものになっている。それを知っているせいか,天にむかって突き抜けていくような迫力が弱まったように思います。

 撤去,再設置される前の写真と比べてみると作品の下部が切断され,波型のうねりの数が減ってることが分かる。この作品が分割,撤去されずに再設置されたことはよかったが,美術館が所蔵作品の管理保全に積極的でなく,「芸術の破壊行為」を行おうとしたことには多くの批判の意見が寄せられた。

  作者: 富樫 実

    制作年: 1988年

    高さ: 約11m (当初は12m)

    材:御影石(山口県黒髪島産)

                

切断,再設置前の状態


  

 

京都の野外彫刻              ~フィールドワークⅡ~

フィールドワーク②

「空にかける階段 ’02-L」 富樫 実 作

 地下鉄東西線御池市役所改札東北口から地上に上がる階段の途中に設置されている。京都テルオオクラとつながる地下一階の通路にあるこの作品は,「空にかける階段」シリーズは,波形の柱で構成され,伸びあがるイメージの作品が多いが,この作品は近年制作されている円相の形体である。柱状の構成作品においても,これら円相の作品においても作品と作品との間にある「空」や円相の形にくりぬかれた「空」から,見えない階段が伸び,広がる作品なのだろうか。

 

 

京都の野外彫刻~フィールドワーク⑥~

「こんちき」

 以前は四条河原町東南角に設置されていたが,現在は地下鉄京都市役所前の構内改札付近にある。

「自立と自戒の精神」をテーマにした作品とのこと。(作品近くの解説より)

 祇園祭りのコンチキチンという音から題名がつけられたようだ。鬼瓦のような顔を持つ像であるが,祇園祭りを連想させるためか,あまり恐ろしさを感じさせない。少しユーモラスな印象すらあった。この作品でも磨かれて光を反射する面と彫り跡を残した面があり,表情が豊かである。この作品の背面がほぼ平面なのは,もとの設置場所に合わせたためか,と思われる。

                      

                                        設置場所: 地下鉄市役所前構内改札付近                                     

     (京都市下京区,地下鉄市役所駅)                         

制昨年:1976年                                  大きさ: 高さ約1.5m,幅約0.4m

 

 

京都の野外彫刻~フィールドワーク⑤~

「はんなり地蔵」

 京都市内には,かつては各町内に地蔵さんが祭られていた。また,夏には子どもたちのために「地蔵盆」が町内の行事として執り行われた。

 この作品は大丸百貨店の敷地内に設置されているが,作品の台に「西魚屋町」という文字があった。やはりこの作品は,地域のお地蔵さんなのだろう。側に花が供えられていた。作品を調べている時にも地域の年配の方が手を合わされていた。

 3体の幾何学的な形の組み合わせの作品である。向かい合う2体の作品の間から,奥に配置された少し小さめの作品が見える構成になっている。「はんなり」は,上品で落ち着きがあり,明るさや華やかさもあることをいう京ことばだ。黒御影の磨かれた表面や幾何学的で抽象化された形態にはんなりさがある。

 設置場所: 京都大丸北入り口付近                                                        

 制昨年:1994年

 大きさ: 高さ約1.2m,幅約0.4m 2体,

 高さ約1m,幅約0.3m 1体


        



 

 

京都の野外彫刻~フィールドワーク④~

「OKIBARIYASU」

「おきばりやす」とは,京ことばで「がんばって下さい」という意味。今の若者たちは使わなくなった京ことばだが,祇園界隈ではまだ使われていることばだろうか。舞扇子を持つ舞子の練習姿であろうか。この作品にふさわしい題名だ。朱の顔にある片側だけの少し削って表した瞳や帯のあたるところに掘られた窪みに差された朱の色に可愛らしさがある。ツルツルに磨かれて光を反射する面と敢えてでこぼこな彫り跡を残した面が野外の自然光に照らされて面白い。

 

設置場所: 野村証券

           (京都市下京区四条通り北側)

制昨年:1989年 

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京都の野外彫刻~フィールドワーク③~

「朱装」

 京都文化博物館の建物に付属されたように設置されている。通りに面して,建物の奥の大きなショーケースから現れたようだ。今回は外から作品を見たが,建物の中から横長の大きな窓を通しても作品をみることができるようで,外の風景と作品がどう見えるのか,また機会があれば確かめたい。コンクリートの三角柱から両側に2mを越える「翼」が伸びている。正面から見ると衣文掛けに着物が掛けられた姿である。建物の横に長いショーケースにも見える窓(ガラス)と作品との関係にも親和性がありそうだ。

設置場所: 京都文化博物館東側入り口付近

制昨年:1990年

大きさ: 横約5m,幅約1.5m  

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京都の野外彫刻~フィールドワーク②~

フィールドワーク②「清水九兵衛~環境に溶け込む作品~」鑑賞

「CONNECTION」

 京都センタービルの南東角に設置されている。コンビニの前の通路に面していて,多くの通行人が通る所である。野外に設置されているためか,朱色が少しくすんだ印象を持った。しかし,作品の台座下に植え込まれた樹木の緑とのコントラストが美しい。鋳造アルミが和菓子の八つ橋のように折り曲げられ,突き出た形が面白い。横から見ると,天狗のようだ。折り曲げられた鋳造アルミを支える巨石との組み合わせも,単なる作品の台ではなく,材質(違い)や環境(周りの植え込み),色の調和を考えた作品である。

 

設置場所:京都センタービル南東角

         (下京区塩小路通り北側)

制昨年:不明

大きさ: 高さ約2m

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